研究概要 |
本研究では,平成16年度から平成17年度にかけて以下の研究結果を得た。1.ネットワーク・マトリックスコラーゲン(NM-コラーゲン)の簡便な調製法の確立,2.分子レベルでの構造解析,3.線維芽細胞3T3-L1の培養観察,4.マウス好中球との相互作用の蛍光顕微鏡による観察.以下に群細を示す. 1.ニワトリの皮を材料に,脱脂・脱灰することにより酸可溶性コラーゲンを効率的に抽出し,アクチニダインを添加して効率的かつ高回収にNM-コラーゲンを調製する方法を確立した. 2.ペプシンで加水分解したアテロコラーゲンとNM-コラーゲンの抗原特異性と結合能に関する知見を得た.酵素免疫測定法にて抗コラーゲン・ポリクローナル抗体(特異性:3重螺旋構造)を用いてその反応性を調べた結果,抗体結合量はアテロコラーゲンよりNM-コラーゲンの方が多かった.この結果は,免疫電子顕微鏡でも観察されたことから,コラーゲンの抗原提示量が変化する構造変化が示唆された. 3.これまでに,走査型電子顕微鏡観察によりNM-コラーゲンは線維形成しない特性をもつことが明らかになった.NM-コラーゲンを固定化した培養条件(3日目)では,3T3-L1細胞を培養すると,細胞接着能は著しく低下し,また細胞周辺が繭のような形態をしていた.アテロコラーゲンを固定化した培養条件(3日目)では,増殖能は低下していたが,繭のような形態は観察されなかった. 4.好中球とNM-コラーゲンの相互作用をDAPI(核染色)とローダミンファロイジン(アクチン染色)にて蛍光顕微鏡で観察した.その結果,アテロコラーゲンとNM-コラーゲンで明らかな差異が認められた. 以上の結果より,研究成果は概ね計画通りに進行したことが示された.本研究により興味深い知見が得られたことから,継続してNM-コラーゲンの特異な性質と細胞との相互作用を調べる価値が高まった.
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