研究概要 |
本研究では,パルスレーザーアブレーション法によってハイドロキシアパタイト(HA)を人工関節軟骨とビーズ型人工歯根に超薄膜被覆し,それらに高度な生体親和性を与える方法を開発した. 1.HA被覆した人工関節軟骨ポリビニルアルコールハイドロゲル(PVA)の生体親和性評価 PVAは含水性エラストマーであり,表面親水性が大きい.そのため細胞接着性(生体親和性)は極めて悪く,人工関節軟骨として利用するとき,その母床である軟骨下骨との組織結合は全く期待できない.そこでPVAの比較的大きな変形にも追随できるHA被覆,すなわち超薄膜化HAを被覆する方法を提案しその効果を検討した.厚さ300nmのHAを被覆したPVA/HAは,PVAの含水率が小さいほど生体親和性が高かった.特に含水率33%のPVA/HAは,良好な生体親和性を示した.他の実験条件の結果も含めて検討し,HA超薄膜被覆は元来生体親和性を持たないPVAに良好な生体親和性を付与できると結論した. 2.HA被覆したビーズインプラントのバイオメカニクス的評価 レーザーアブレーション法によってHAを約10μmの厚さでビーズ型人工歯根の表面に被覆した.そしてビーズが形成する連通孔断面におけるCaとPの元素分析を行い,本方法を用いると従来手法では不可能であった連通孔深部にまでHAを被覆できることを確認した.一方,HA被膜ビーズ型人工歯根をイヌ下顎骨に埋入し,術後3〜12週での骨成長状態をμCT画像によって評価した.その結果,HA被膜インプラントの連通孔深部への骨成長速度は,HA被覆しない場合に比べて2倍程度速いことがわかった.しかし,術後3週での骨からの引抜強さについて,HA被覆の効果は明確でなく,術後より早期においてHA被覆の効果が期待できることが示唆された.
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