研究概要 |
本研究では歩行リハビリテーションを目的とした装着可能な外骨格型ロボットを開発するとともに,ロボットシステムのリハビリテーション臨床を通じ,神経・筋機能の回復過程における生理的基礎データを得て,ヒトの2足歩行機能の再建メカニズムを神経・筋システムから医工学的に解析することを目的とした.3年間の研究期間を通じて以下を行った. (1)市販の脊髄損傷者用歩行装具をベースに、制御性に優れる小型ACリニアアクチュエータを両膝関節および股関節に組み込んだ外骨格型歩行ロボットシステムを構築した。このシステムを用い、胸髄完全損傷者を対象にトレッドミル上歩行実験を実施し,歩行動作並びに歩行関連筋の活動量を計測した.その結果、遊脚期における膝関節回りの強制的屈曲伸展動作により直接筋長変化がもたらされる大腿筋群,腓腹筋に筋電変化を認める被験者が多いことが判明し歩行CPGに対する伸張反射効果と考えられた. (2)バネと電磁石を組合せた足関節外乱刺激デバイスを開発し、脊髄損傷者を対象に筋電応答を調べた。足関節伸張刺激の角度変位量ならびに速度は,10〜20deg,100-300deg/sec程度とした。その結果,股関節伸展位姿勢(立位・静的)は,他の姿勢と比較し伸張反射を高めること、振幅モジュレーションは脚を振り出した動的状態で変化すること、等を見出した。また,同様の傾向を健常被験者群にも見出した.脊髄損傷者が高位中枢と麻痺下肢筋肉間の神経接続を失っていることを考えると,本結果の基礎的メカニズムとして,股関節角度変化による求心性入力変化を考えることが可能であった. (3)上記の外骨格型ロボットならびに足関節外乱デバイスのCPGに対する効果をさらに発展させ,車椅子のフットレスト部を直動型アクチュエータにて長軸方向に動作させ、回転運動に変換させることで,足関節に伸張反射運動を与えるデバイスを開発した.さらに,足関節に対して伸張反射を与えることで歩行CPGの応答解析実験を中心に行った.下肢の運動機能に完全麻痺を持つ脊髄損傷者を対象に足関節運動を実施したところ,下肢諸筋のリズミカルな筋活動ならびに下腿血流量増加が引き起こされることを見出した.
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