研究概要 |
リハビリテーションやケアの分野において,被験者の日常の活動状況(生活活動度),とりわけ臥位、座位、立位、歩行、車椅子駆動などの動作状態を客観的に把握する方法として,加速度および傾斜センサーを用いて被験者の姿勢および動作状態を計測し,計測したセンサーデータを用いてIf・Thenルールを用いた手法が提案されている. この手法では,計測されたデータから一定の閾値により姿勢や動作を評価して,臥位、座位、立位、歩行、車椅子駆動を判定する汎用的な方法となっている.しかし,リハビリテーションやケアにおいては,症状や状態および体形などによる被験者の個人差があり,汎用的な判定ルールのみでは十分に評価出来ないことが予想される. 本研究では,被験者の日常活動状況を評価する上で,被験者の個人差に対する問題点を解決することを目標としている.被験者の個人差に対する最も簡便な解決方法としては,個々の被験者に対して固有の判定基準を設けて判定することが考えられる.しかし,このような判定基準を,各被験者毎に手作業により作成することは非現実的である.すなわち,このような個々の判定基準を自動的に生成する手法が求められる.そこで,ニューラルネットを用いて,個々の被験者から得られたセンサーデータを用いて,個々の被験者に対する判定ルールそのものを生成することを検討した. まず,3次元傾斜・加速度センサーを用い、日常の動作時の姿勢および加速度を24時間計測可能な、センサー信号記録装置を試作した。この装置を用いて、計測被験者の体幹部および大腿部に装着した3次元傾斜・加速度センサーより,各部の傾斜角と加速度データおよび計測時の被験者の状態(臥位、座位、立位、歩行、車椅子駆動)を計測・記録する.次に、傾斜角データを入力とし,臥位、座位、立位を出力とするニューラルネットワークを構成し,傾斜角データとそのときの被験者の状態を用いて学習を行い,臥位、座位、立位を判定するネットワークを自動生成する.また,加速度データと被験者の状態を入力とし,静止,歩行,車椅子駆動を出力とするニューラルネットワークを構成し,加速度データとそのときの被験者の状態を用いて学習を行い,静止,歩行,車椅子駆動を判定するネットワークを自動生成する. この方法を健常者に適用し,実験により臥位、座位、立位、歩行、車椅子駆動を判定するネットワークが自動生成され,さらに,実際の動作状態(臥位、座位、立位、歩行、車椅子駆動)が判定できることを確認した. さらに、施設入所者について、実際の生活状況での計測を行い、提案手法による臥位、座位、立位、歩行、車椅子駆動の判定を実行し、良好な結果を得た。
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