研究概要 |
バイオメカニクス的分析による客観的・力学的情報,および運動表象を言語的コード化した主観的・感覚的情報が,運動制御や情報伝達においてどのように働いているのかを検討するために3つの研究を行った. 研究1では,言語的にコード化された情報の働きを明らかにするために,ことばによってどのような運動表象が形成され,動きがどのように調節されるのかを分析した.その結果,言語的にコード化された情報によって,動きの時間的・空間的な調節が可能であることが示唆された.また,言語的にコード化された情報は,主観的・感覚的であり,その受け取られ方には多様性が認められたことから,言語的な情報伝達における困難さが示唆された. 研究2では,バイオメカニクス的分析によって得た客観的情報を収集し,パフォーマンスの違いが,客観的な指標にいかに反映されているのかを検討するとともに,主観的・感覚的な情報との関連性を検討した.投動作を課題に用いて,パフォーマンスと客観的指標である手の位置の関係を分析したところ,手の位置のばらつきがパフォーマンスの良し悪しを示す客観的指標となりえることが示唆された.また,パフォーマンスの高い群は,イメージと実際の動きが一致する傾向が示された. 研究3では,運動のイメージが動きのパフォーマンスにどのように反映されるのか,また,運動のイメージと運動を観察することで形成されるイメージ(感覚のイメージ)との相互関連性を検討した.動作時間と指先の移動の軌跡を求めたところ,時間的なイメージはパフォーマンスに反映されたものの,空間的なイメージはパフォーマンスには反映されなかった.また,感覚のイメージには,ばらつきがあり,運動のイメージとは必ずしも一致しないことが明らかになった.
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