研究概要 |
最初に,両手同時動作と同様に,両足同時タッピングを行うと,力は非対称に制御されたが,タイミングは対称に制御された。 次に,非対称な出力を伴う両手タッピングによって,非利き手の出力が大きい時に,力の変動の結合が惹起することを右利きで証明した。運動課題は両手交互動作と両手同時動作である。左手の出力が大きい同時動作では力の変動に左右差がみられなかったが,その他の運動課題では小さな出力の方が大きな出力よりも大きな変動を示した。このことは,左手の出力が大きい同時動作では右半球だけでなく,左半球も賦活されて力の変動に左右差がなくなったと考えられる。さらに,同時動作は交互動作よりもタップ間間隔の変動が小さかった。このことは,2つのタイミング機構が交互動作よりも同時動作において強く結合し,左右の力の変動の結合とも連動していた。 さらに,視覚的フィードバックを伴う片手タッピングを用いて,視運動情報の両側転移における一側優位性を検討した。半数の被験者は最初右手で練習試行を遂行し(右手開始群),残りの半数の被験者は最初左手で練習試行を遂行した(左手開始群)。両試行中,被験者は音刺激にタップを同期させながら,モニター画面上の目標出力を作るように教示された。その結果,力の変動に関して,右利きの右手開始群は練習に有意な効果がみられなかったが,左手開始群は練習に有意な効果が認められた。それに対して,左利きの被験者は反対の結果が得られた。このように,右利きでは左手から右手への正の転移が観察されたが,左利きでは逆の方向に正の転移がみられた。一方,左利きは右利きよりも全ての条件において力の変動が小さく,左利きと右利きとの大脳半球間の情報処理の違いを示唆した。 したがって,四肢のタイミングは共有した中枢のタイム・キーパから制御されたが,力は左半球優位に制御した。一方,視運動情報は右半球が優位に制御しており,大脳半球間では運動に関する情報処理を相補的に行っていた。
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