研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、酸化ストレスによる糖取り込み亢進メカニズムを明らかにすることである。酸化ストレス負荷モデルとして、ラットの単離骨格筋をインキュベーションし、キサンチンオキシダーゼ+ヒポキサンチン暴露を用いた。キサンチンオキシダーゼ暴露の活性依存的に糖取り込みの亢進が認められ、カタラーゼの同時暴露によりこの効果は完全に抑制された。このことより、過酸化水素の関与を想定し、キサンチンオキシダーゼ+ヒポキサンチン暴露で観察された糖取り込み亢進効果が、過酸化水素暴露においても認められるか検討した結果、同様なデータが得られた。これら酸化ストレスによる骨格均等取り込み亢進メカニズムを探るため、一酸化窒素、AMPキナーゼ、インスリンの3つのシグナル伝達経路を検討した。酸化ストレスによる糖取り込み亢進は、PI3キナーゼの阻害剤により完全にブロックされたことからインスリンシグナル伝達系の関与を想定し、インスリン刺激でリン酸化されるAktの変化を検討した。その結果、過酸化水素刺激によりAkt Ser^<473>の顕著なリン酸化が認められた。一方、過酸化水素刺激によるAMPキナーゼ活性は変化が認められず、ATP,AMP濃度も変化しなかった。以上のことから、酸化ストレスにより骨格筋の糖取り込みは亢進すること、さらにそのメカニズムとして、インスリンシグナル伝達系の関与が明らかとなった。慢性的な酸化ストレス暴露は、インスリン抵抗性を引き起こすことが知られている。しかしながら、本実験の急性暴露ではむしろインスリン感受性を亢進させることから、酸化ストレス暴露と糖取り込み調節には、暴露の時間経過が鍵を握ることが予想される。今後、この点について検討を加えたい。
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Exercise, Nutrition, and Environmental Stress (Nose H, Joyner MJ, Miki K, eds.) (Coopper Publishing Group, LLC, Traverse City: USA)
ページ: 56-72