研究概要 |
本研究では,今後普及が期待される簡易な常圧低酸素室を用いて,A.低地で競技を行うスポーツ選手,およびB.高所へ出かける登山者が,1日に1時間程度で効果が得られるような,実用性の高いliving low-training high形式のトレーニングを開発した.最終的に作成したガイドラインは以下の通りである. A.スポーツ選手に対するガイドライン:高度は2000mを基準とするが,過去の低酸素トレーニング経験,その日の体調,高所に対する適性などに応じて柔軟に変化させる.運動強度はできるだけ高強度とする.1回あたりの運動時間は30分間を目安とする.運動様式は,目的とする競技の特性に合わせて,持続型またはインターバル型のどちらかを選ぶ.運動頻度は1週間に3回程度とする(ウエイトトレーニングのように,補強トレーニングの位置づけで行う).期間は2〜5週間とし,競技会前のピーキングとして行う.効果としては,乳酸が蓄積するような高強度の運動における持久力が改善する.また無酸素性的な運動能力も改善する場合が多い. B.高所登山者に対するガイドライン:高度は4000mを基準とするが,高所経験の有無,高所に対する適性,その日の体調などに応じて柔軟に変化させる.運動強度は,動脈血酸素飽和度では70〜80%台,心拍数では最高心拍数の60〜70%,主観的運動強度では「楽」〜「ややきつい」を目安とする.1回あたりの運動時間は合計で1時間とし,30分間の安静と30分間の運動で構成する.このトレーニングを4〜6回行うことで初期の高所順化が得られるが,その実施時期は高所に出かける2週間前〜直前に行うのがよい.効果は,3000m以上の高所に出かけた時にほぼ100%の人がかかるとされる急性高山病(頭痛,めまい,疲労感)が軽減する.このため安全性や快適性が高まる.また現地での高所順化期間を短くできるため身体に無理をかけずに登山期司の短縮を図ることも可能となる.
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