研究概要 |
我々は先行研究においてNOを含むフリーラジカル生成は急性運動による疲労,筋肉損傷,筋原線維分裂等と,持久的運動による免疫性機能低下などと関連が深いことを見いだしている.さらに昨年度,骨格筋に機械的な損傷を加えたときのNO生成応答を経時的に観察したところ,二相性の反応を示し損傷直後および48時間後に著しい生成増加が起こることを見いだした.本年度は電気刺激とモーター駆動による損傷モデルと,実際の走運動による筋損傷の違いや,過重力環境下における筋損傷発生機序を明らかにすることを目的とした.走運動ラットにはトレッドミルランニングを用い,高強度・短時間の走運動を負荷した.機械的損傷モデルと同様に,走行直後に屠殺・解剖しサンプル筋を摘出する.ランニングは通常の上り坂走行を行い,腓腹筋・ヒラメ筋・前脛骨筋を摘出し測定に供した.短時間の急性高強度ランニングを負荷したラットの下肢骨格筋では,NO合成酵素(Nitric Oxide Synthase:NOS)のmRNAが,筋腱接合部,筋腹の順に発現し,近位部には観察されないという知見も得た.また3G負荷の過重力により下肢筋群に組織学的損傷を伴わないNOやサイトカイン発生反応が観察された,これは電気刺激とモーター駆動による損傷モデルには見られない知見であり,運動時や過重力環境特有の損傷時および筋再生・治癒時にNOが何らかの形で重要な役割を果たしていることを示唆し非常に興味深い.
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