研究概要 |
本研究は性周期および運動トレーニングが運動時の熱放散反応に及ぼす影響を3つの実験から検討し,女性の熱放散反応を明らかにすることを目的とした.これら3つの実験の要約は以下の通りである.1)一般女性において,常温環境下での中等度運動時の熱放散反応は卵胞中期と比較して黄体中期に低下することが示唆された.長期間運動トレーニングを継続した女性は一般女性でみられるような黄体中期での熱放散反応の低下がみられず,また,長期運動トレーニングによりその熱放散反応が改善され,この改善は熱放散反応の体温閾値の低下と感受性の亢進に起因することが示唆された.さらに,長期運動トレーニングによる改善は卵胞中期よりも黄体中期により顕著にみられることが示された.また,その改善は皮膚血流反応より発汗反応で顕著にみられた.2)運動トレーニングによって性別にかかわらず発汗反応は改善されるものの,女性における改善の程度は男性のそれと比較して小さく,その改善の程度に性差の存在が示唆された.また,その性差は運動強度の増大とともに顕著になることが示唆された.3)女性においてトレーニングを開始した性周期相にかかわらず,約3ヶ月の運動トレーニングにより熱放散反応の体温閾値は低下し,熱放散反応が改善されると示唆された.熱放散反応の量的な改善は発汗反応のみにみられ,この改善は黄体中期からトレーニングを開始したL群より卵胞中期から開始したF群で顕著であることが示された,また,トレーニングの効果(体温閾値の低下)は1ヶ月目までに生じ,トレーニング終了後1ヶ月目までに消失することが示唆された.
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