研究概要 |
小麦依存性運動誘発アナフィラキシーに関する主要アレルゲンを明らかにするために、溶解性で小麦タンパク質を塩溶性タンパク質,EtOH可溶性タンパク質およびアルカリ可溶性タンパク質に分画した。各分画タンパク質に対する特異抗血清をラットを用いて作成した。各未加熱タンパク質のペプシンによるin vitroの消化性を比較したところ,塩溶性タンパク質の消化性が最も進んだ。次いで各抽出タンパク質をICRマウスの胃内に投与,30分間の強制運動を負荷後,各消化器官内に残存するタンパク質を比較検討した。抗原性を保持したタンパク質は,全ての群の小腸内可溶性画分から検出された。さらに3群マウスの門脈血中からもそれぞれの抗原性を保持したタンパク質が検出された。各画分タンパク質で感作B10.Aマウスを作成し、これらマウスに対応する各アレルゲンを経口投与・30分間の強制運動を負荷した後の小腸粘膜上皮組織および肝臓へのアレルゲンの進入を調べた。グリアジン及びグルテニン感作マウスにおいて,小腸の損傷と肝臓の染色が顕著に高かった。主要な食物アレルゲンは塩溶性タンパク質であるが、不溶性の小麦グリアジンがアレルゲンとなる要因の一つは、胆汁による乳化作用でグリアジンの消化性が高まったためと考察された。次いで、3画分タンパク質をそれぞれ非感作マウスに経口投与し、消化・吸収性を実験したところ、グリアジンの経口投与によって小腸粘膜上皮組織の著しい損傷が観察された。組織切片のH-E染色によって絨毛の顕著な脱落が認められた。この結果は、セリアック病の原因タンパク質として報告されているグリアジン由来の特定ペプチドが小腸粘膜上皮組織に対する毒性作用を有することと相通じる現象である可能性が推察された。運動を負荷するとこの損傷はより重傷となることが確認された。
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