研究概要 |
高齢社会の進行は,農業においては農業従事者の高齢化,農業労働における女性就労者の増加という問題を引き起こしている。本研究においては,高齢農業従事者の健康を規定する生活環境要因について,食生活を含む生活習慣と疾病との関連,食習慣と高齢者の健康の問題,農作業による身体的疲労の原因と考えられる作業負担調査に基づいた総合的解析を行うことにより,社会的支援(social support)としての食生活改善の意義について,疲労軽減対策も含めた高齢農業従事者の健康に対する方策を明らかにすることを目的に研究を進めた。 調査は山口県内の柑橘類栽培農家を対象に疲労に関するアンケート調査を基本健康診査に合わせて実施した。また,作業負担と健康状態,疲労に及ぼす食事摂取状況の影響について総合的に判定できる実験モデルを考案し,健康な若年者を被験者として,現地農作業に基づいた模擬実験を行った。農作業負荷時における疲労自覚症状,心拍数,血糖値および乳酸値の測定結果から疲労に与える食事の影響は少なくないことが示唆された。作業負担と健康状態,疲労に及ぼす食事摂取状況の影響については,食習慣としての長期間にわたる食事摂取状況の影響をさらに検討する必要があると考えられた。そこで予備調査として,高齢女性農業従事者を対象に疲労アンケート調査と合わせて食物摂取頻度調査法(BDHQ)による栄養調査を実施し,食事摂取状況の影響について検討した。 調査対象を拡大し,栄養状態と食習慣の問題点、食生活のもたらす健康状況および疲労の問題点について高齢者の生活構造の中に潜在する健康問題の改善策について,さらの検討を進める必要があると考えられる。
|