研究概要 |
研究課題「理科を専門としない教員のための水溶液に関する指導資料の開発」に関する研究実績は,下記の通りである. 第一に,溶液教材関係の情報を収集した.具体的には,インターネットの検索エンジンやChemical Abstractsなどの抄録誌を用いて,国内外の化学および化学教育関係の雑誌を検索した.とりわけ,日本化学会の化学と教育やアメリカ化学会のJournal of Chemical Education,さらに,イギリス化学会のEducation in Chemistryには,最新号から順次遡及調査し,本研究の基礎となる文献を入手した. 第二に,小学校理科における水溶液の取り扱いに関する問題点について考察した.市販の小学校向けの理科参考書にも,ミョウバンのような結晶水を含む化合物の水に対する最大溶解量の定量的な取り扱い方に関して重大な誤りがあることを指摘した.そして,理科を専門としない教員にも,最大溶解量が容易に取り扱える公式を提示した. 第三に,小学校5年生理科で取り扱われる「物のとけかた」に関するマイクロスケール実験について研究を深めた.通常実験と比較して,試薬の量は1/5,実験時間は1/4に短縮できることを明らかにした.そして,研究成果を,日本理科教育学会全国大会や,2005環太平洋国際化学会議にて発表した. 第四に,中学校や高等学校理科における「酸・塩基および陽イオンの定性分析」に関するマイクロスケール実験について研究を深めた.実際に中学校や高校の理科授業で実践し,試薬の節約など一定の成果が得られた. 第五に,小学校,中学校や高等学校の理科授業で有用と考えられる,二成分系溶液の希釈に関する一般式を誘導した.各種文献などにも見当たらない新規的な内容であり,即座に希釈の操作を行うのに必要な数値が算出できるので,汎用性の高い式であると考えられる.成果を,群馬大学教育実践研究に発表した. これまでに得られた成果は,いずれも理科を専門としない教員に対して有用な内容である.幸いにも,平成18年-19年度,継続して基盤研究(C)に採択されたので,今後,マイクロスケール実験を中心として,溶液教材の実験的・理論的検討を推進させる所存である.
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