研究概要 |
小学校の図画工作科や中学校技術・家庭科の木工作や木材加工では,教師は電動糸鋸盤に関する経験知をもとに漠然と指導し,児童や生徒はそれをみようみまねで無造作に使用してきた.すなわち,電動糸鋸盤を用いた鋸断作業は誰にでも比較的簡単に出来るため,正しい使用方法や技能向上に関する研究・実践は疎かにされており,図画工作教育関係者は言うに及ばず技術教育研究者からも一切なかったといっても過言ではない. 本研究では電動糸鋸盤の操作時に手の指にかかる指圧をリアルタイムで測定し,熟練者と初心者における指圧変化の特性を見出し,その分析を通して電動糸鋸盤による鋸断指導の方法を確立することを目的としている. 昨年度までの研究によって,鋸断作業時の指圧をリアルタイムで測定するシステムの原型は出来上がっており,本年度はこのシステムを修正し被験者に装着させ,鋸断作業させた.その結果,以下のことが明らかになった. 1)鋸断作業時の指圧が忠実に測定できたこと. 2)鋸断作業熟練者の左右5指の平均指圧は,協応関係にあること. ただし,非熟練者の平均指圧パターンにも,協応関係らしきものが見られる場合もあり,10指相互の関係を検討する必要があることが分かった.また,被験者の鋸断技能のランク付けも,学校種(年齢)を考慮したものが必要であることも分かった.ただし,本システムには以下の(1),(2)の問題点もある. (1)本システムは両腕の各指に1枚の極小薄型圧カセンサ(3mm角)を取り付けるのに時間がかかること. (2)圧カセンサを取り付けた指位置が作業時に絶えず材料に接触しているとは言い切れないこと。 センサ数を増やすことは可能であるが,被験者にセンサを取り付ける時間が今以上にかかることになる.(1),(2)の解決策として市販の多点測定型センサグローブを用い,本システムは作業時の足裏の圧力測定等,複合的な鋸断構造を解明するために利用することを計画している。
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