研究概要 |
1.教育機関の設計科目担当者および学生と生産現場の設計部門管理者への失敗事例と失敗に対する考え方をアンケート調査した.産業界と教育現場とでの失敗では原因,環境,目的が異なり,教員・学生と企業人との間に失敗に対する考え方にも違いがある.失敗事例を教育に活かすために,これらの特質を検討する必要がある. 2.失敗事例を学生と企業技術者に紹介し,「興味をもつ失敗事例」,「学生と技術者とでの関心の示し方の違い」,「教員-学生間の認識の違い」などについて分析を行った.失敗事例に対する興味は自分の仕事,専門など自分との関わりあいに基づいているために興味を示す失敗事例が異なる.また,学生は経験が少ないため実体験に基づいた失敗事例には強く関心を示す傾向がある.失敗は複数の原因,行動,結果,対策から多様な面をもっているため失敗を紹介すると情報の送り手と受け手の間で注目点が異なる場合がある.失敗事例の紹介には,目的に応じて詳細を省略して要点を強調するのが効果的な場合と可能なかぎり詳細に事例を紹介する方が効果的な場合とがある. 3.学生が創成科目においておかした失敗体験を他の学生へ伝えるときにどのような問題が起こるのかアンケート調査により調べた.その結果,失敗の背景を非体験者に説明しなければ情報が伝わらない場合がある.また,事前に工夫してうまくいった事柄より失敗を経て工夫したことのほうが印象に残り易く,学生はそれらの中から教訓を得ていることが分かった. 4.学習達成度を用いた成績評価システムを運用しその効果を継続して調べた.この結果,入力に煩雑さを伴うとの感想があるものの学生自身が次学期の目標設定に役立てている.また,デザイン系科目の成績と他の科目(例えば,専門科目)の成績の相関が低く,失敗を含めたこれらの科目の評価手法に問題があることが分かった.
|