研究概要 |
平成15年度に開始された高校の普通教科「情報」はA, B, Cの3科目に分かれ,重点の置き方が異なる上,受験対策に力点を置く高校では軽視されているとの声も聞こえる。そこで,大学における導入教育を見直すため,主に次の3種類の調査を行った。 ・教科書採用冊数に基づく調査 ・推薦入試等合格者へのガイダンス時におけるアンケート調査 ・高校を訪問し,「情報」の担当教員と面談しての調査 これらの調査から以下の点が明らかになった。 (1)平成17年度でも「情報A」は全国平均で3/4強を占めているが,「情報B」あるいは「情報C」への移行傾向が顕在化し始めている。 (2)「情報」は他教科の学習の基礎的スキルを与えるため低学年での開設が望まれているが,平成15年度に1年生で履修した生徒数は全国平均で61%に過ぎず,50%未満の県も少なくない。今後開設学年を引き下げる必要が生じようが,実習室数と教員数が足枷になることが予想される。 (3)「情報」は2単位の必修教科であるが,約2割の高校で1単位分の授業時間しか割いていない。ただし,現在の学習指導要領の内容では飽き足らない高校もあり,早急な改善が必要である。 (4)「情報」の授業がパソコン操作のスキル向上に果たす役割は小さく,操作の実習時間数を縮減しても影響は小さい。 (5)「情報」教員の負担は極めて大きいが,周囲の理解が得られておらず,「情報」のみの教員免許で採用する県も少ないことから,今後「情報」教員の育成・確保が懸念される。 (6)IT設備は充実してきているが,活用されていない。 大学における導入教育については「情報」の第1期生が入学したばかりで多くを議論できる状況ではないが,導入教育の改編内容とその根拠となるデータを示すとともに,第1期生の入学後に得られたデータとの比較を行って改編内容がほぼ正しかったことの確認と,その方法を示すことができた。
|