研究概要 |
本研究の成果は,次のとおりである。1.高校での普通教科「情報」の授業に対する現状調査の結果,現在の授業内容には検討すべき点が含まれていること,また,授業実施体制にも改善すべき点が含まれていることが明らかになった。2.全国の文系学部を持つ国立大学で現在実施されている情報教育の内容を調査した結果,全体としては,高校教科「情報」の既履修生に対する対応が遅れていることが明らかになった。3.中級レベルの情報活用能力とコンピュータ不安度を測定する質問紙を用いて,4つの研究が実施された。その結果,(1)大学入学直後の調査データの検討から,高校教科「情報」の履修の有無による中級レベル情報活用能力やコンピュータ不安への影響は,あまり強く生じていないことがうかがえること,(2)大学入学後の1回生の情報活用能力等の推移について調査した結果,4月よりも7月の方が,情報活用能力が有意に高く,またコンピュータ不安は有意に低くなっていた。このような結果からは,高校教科「情報」の履修の有無による情報活用能力やコンピュータ不安の差はあまりみられず,むしろ大学入学後の情報関連授業の受講の影響の方が強く示唆される。 以上のような研究結果より,現在のところでは,高校で実施されている教科「情報」の履修によつて大学1回生の入学時の情報活用能力に大きなレベルアップが生じているとはいえず,従来大学で行ってきた情報リテラシーの育成をめざした情報教育の内容を,全面的に発展的内容に置き換えることは適当ではないと思われる。ただ,入学時の学生の情報活用能力の個人差が大きくなっていることは考えられ,従来からの基礎的なものだけではなくて,能力の高い学生に対応する発展的な内容も選択課題として含むことを考える必要があるだろう。そのため.4.発展的な内容の教材例の開発のために,2つの研究が実施された。
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