研究概要 |
本研究では,マスメディアとは異なる選択肢(オルタネイディブ)のメディアである,パブリック・オピニオン・チャンネル(POC)を使い,遠隔コミュニティ間で交流することで,他地域に対する理解がどのように変容するのかについて調べた.POCは,テキスト情報と静止画とを組み合わせたものを複数並べて,紙芝居のようなストーリーを作り,インターネットを介してそれらを交流させるシステムである. 日本国内3〜4地点を結ぶ国内コミュニケーション実践(初年度),あるいは,日本国内3地点(札幌,岐阜,鳴門)と韓国2地点(仁川,春川)の5地点を結ぶ国際間コミュニケーション実践(2年目)を行った.例えば国際間実践では,各地点とも数名の大学生が,週一回,3ヶ月という比較的まとまった期間にわたって,POCを介して互いの地域を紹介したり他地域について質問したりした.結果,いくつかの点において交流前後で,他地域の印象が変化したことがわかった.例えば,岐阜と仁川の「活動的/非活動的」という点に対する印象に変化があった.また,この活動を通じて,参加した学生は,(1)他地域についての知識,を学んだだけでなく,(2)静止画を加工する技術など情報メディア活用スキル,(3)どのような表現を使えば他地域に理解してもらいやすいかといった表現・コミュニケーションスキル,(4)それぞれの地域内でひとつの情報を編集するのに必要な協同的思考スキル,などを身につけていった. 結論として,オルタネイディブメディアとしてのPOCを利用することにより,参加者の他地域に対する理解が変容する可能性と,参加者がPOCによるコミュニケーションを通して自地域を理解してもらえるようにする表現・コミュニケーションスキルが獲得していくことが示された.
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