研究概要 |
本研究においては,人間にとって理解されやすい動画を用いた絵単語(animated icons)を採り入れて,コミュニケーションをより強力に支援するような活用可能性のツールとしての出版物やソフトの開発のための基礎データを収集することを目的とした。誰もが理解可能なユニバーサルデザインとしての普遍的なシンボルを追求するという観点から,高齢者や幼児などの幅広い層を対象にした心理学調査をあわせて実施した。 本研究の特徴は,視覚シンボルの理解や記憶などの人間サイドの要因を重視して,さまざまな属性をもつ人たちのコミュニケーションを支援する新たなシンボル開発を目標にしていることにある。従来このようなシンボルが使用されていた障害児教育の領域にとどまらず,異言語間のコミュニケーションや高齢者とのコミュニケーションなども視野に入れた研究を進める点も本研究の特色といえる本研究では,いわゆる障害者だけではなく,高齢者や幼児を含むより幅広い層の人たちが,絵単語を用いたコミュニケーションを可能にする方法として,動きのあるシンボルをコミュニケーション手段として用いる具体的な方法も提唱した。 また,研究成果の社会への還元のひとつとして,東京の出版社,ブレーン出版から『PICBOOK(ピックブック)』と呼ばれるアルバム式のコミュニケーション・ツールが出版された。本研究の成果としてはもう一点,医療・福祉関連の企業である五大エンボディ株式会社の協力を得て,『PICDIC(ビックディック)Ver.3』と呼ばれるコミュニケーション支援ソフトが完成された。研究の本題の動画シンボルは,まだ十分活用されているとはいえない現状であるが,さらなる研究によりその成果は,さまざまな形で必ず社会に還元されるものと考えられる。
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