研究概要 |
本研究の第一の目的は,高精度磁気年代決定のための基礎データとして,先史時代の日本列島における地磁気分布を明らかにすることである。今回は,約7千年前の鬼界アカホヤテフラ(K-Ah)に焦点を絞り,K-Ahの降下火山灰と火砕流堆積物を九州の30地点で採取した。火砕流堆積物の溶結凝灰岩と降下火山灰からは安定な磁化方位を抽出できた。各地点の磁化方位は地点内でよくまとまり,薩摩竹島,霧島地域,および湯布院・久住地域のK-Ahの磁化方位は地域間でよく一致していた。また磁化獲得機構の異なる火山灰と溶結凝灰岩の磁化方位はよく一致した。これらのことから,今回得られたK-Ahの磁化方位は,テフラ堆積時に獲得された一次磁化(堆積残留磁化)であると判断できる。そしてK-Ah噴出時の日本列島の地球磁場は,全平均VGP(38.1゜W,85.5゜N)の位置を地磁気北極とする地心双極子磁場で近似できると推定される。 第二の目的は,広域テフラの上下の層準で連続して試料を採取し古地磁気測定を実施することにより,広域テフラにより確実に年代を推定できる先史時代の地磁気永年変化を明らかにすることである。今回は岡山・鳥取県と福井県で広域テフラを挟在する堆積層から連続して試料を採取し,その古地磁気測定によって地磁気永年変化を追求した。どちらも大山倉吉テフラ(DKP:約5万年前)より上位の層準の地層である。岡山・鳥取県では主に大山上部火山灰層から,また福井県下河原の河岸段丘堆積物ではDKPから約2.5万年前の姶良Tnテフラまでの層準で古地磁気方位の連続測定を行った。今回の連続測定と既報の広域テフラについての測定結果をあわせて,過去10万年間の日本列島における地磁気永年変化について考察した。
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