研究課題
基盤研究(C)
フィリピン・ルソン島の草本被覆が卓越する小流域において、土地利用形態に伴う水資源への影響評価を行い、適正な流域管理を行うための情報を提供することを目的として気象・水文観測及び土地利用調査を行った。対象とした小流域は、中部ルソン・ヌエバエシバ州・タルグトゥグ地区に存在するヴィラ・ボアド集水域であり、乾季農業を目的として溜池ダムが1999年に建設されたが、計画通りの農業水利用ができない状況にある流域でもある。この理由の1つとして、流域を覆う草本植生(Cogon:現地名、Imperata cylindrica)に注目し、これに覆われる揚所での水文特性を同流域の一部に存在する木本植生(Ipilipil:現地名、Leucaena leucocephala)との比較から検討した。草本内に設置した雨量計と通常の雨量観測における結果から、Cogonによる遮断蒸発は約22%に達することが明らかとなった。この結果を利用し、流域内の植生被覆を考慮した流域内の正味降水量(地表面に達する降水量)を算出した結果、通常の降水量の81%と考えられた。これと貯水量との比較から、流域内降水量の約5割は貯水されることが示されたが、一方本研究で使用した簡易雨量計とフィリピンにおける標準雨量計との比較を行った結果、簡易雨量計による降水量は標準雨量計に対し2割程度の過小評価を行う可能性も示された。標準雨量計を真値とすれば、貯水率は更に小さく評価される。土壌水分量の調査から流域内を覆うCogonの根茎システムが土壌水の流動に強く関与している可能性が指摘された。根茎システムの発達する深さに対応して土壌水分は減少しており、寧ろこれより上部で土壌水分を多く含む傾向が認められた。また、土壌調査の結果から膨潤性土壌が広く分布しており、根茎システムと共に土壌水流道を規定する要因の1つであることが指摘された。
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