研究概要 |
本研究では,岩手県北上高地で見られる風食荒廃地について衛星画像を用いて同定を行い,荒廃地と環境要因との関係について解析を行った.また,経年変化による復旧・防止対策の効果についてもあわせて解析した.その際に衛星画像を定量的に取扱うため幾何補正や地形効果補正を行う必要があった. 狭い領域での幾何補正はシステム情報に含まれるシーンセンターの移動で高精度な補正が確認されていたが,精度の高い補正法が提案されていなかった.そこで,従来の幾何補正式に回帰モデルを加える方法を提案した.地形効果補正についてはすでに提案されている修正コサイン法により山地の起伏による陰の影響を補正することが出来た.また,標高が800m以上が対象地域であり、かつ近赤外画像を使用したために大気の影響の補正の必要性はなくなった. 次に補正された画像を用いて土地被覆分類を行った.分類法は恣意性をなくすため教師なし分類(クラスタリング)を用いた.補正後の画像に対してピラミッドリンキングによる領域分割とK-mean法によるクラステリングを行った後で、荒廃地,裸地,草地,森林,その他の5つに再分類した. 衛星画像の分類結果から風食荒廃地の環境要因との関係と経年変化についての解析を行った.環境要因は標高,斜度,傾斜方位,西の開放度,森林の防風効果,春先の日射量の6要因を8つの水準に分けて荒廃率を推定した.また,全要因を考慮した一般化線形モデルを作成し荒廃率の推定を行った。解析の結果,最も大きな説明力を持ったのは森林の防風効果であり,冬期の偏西風を防ぐ森林が存在することで荒廃発生の危険性は減少するという結果が得られた.なお,斜度が35度以上の地点や早池峰山の頂上付近においては,荒廃地に類似する崖や崩壊地などが抽出されてしまった.そのため,そのような地点を分類後に除去する必要があった.防止対策の効果も確認することができたが、さらに衛星画像を用いることにより、既存の調査地域以外での荒廃地の存在も推定できた.
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