研究課題/領域番号 |
16510003
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
環境動態解析
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
佐藤 泰哲 山形大学, 理学部, 教授 (60007177)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2006年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2005年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2004年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 溶存有機物 / Fe(III)沈殿 / 共沈 / 溶存有機物可使性 / 嫌気的深水層 / 好気化実験 / 微生物ループ / 再評価 / 湖沼 / 嫌気層 / 曝気実験 / 鉄の酸化還元 / 溶存有機物の共沈 / Dissolved organic matter / 微生物可使性 / 鉄、マンガン |
研究概要 |
天然水中の有機物は、圧倒的に溶存態として存在し、溶存有機物(DOM)と呼ばれる。1980年代まで、DOMは湖沼生態系のエネルギーの流れの中で、老廃物と考えられ、無価値の物質だと考えられていた。1983年にAzam等により「微生物ループ」と名づけられた腐植食物連鎖の重要性が明らかになり、湖沼生態系においてDOMが重要な役割を果たすことが明らかにされた。 一方、生産性の高い湖沼では生産層から深水層に供給される有機物が多く、有機物の微生物分解により、夏季成層期、深水層における溶存酸素(DO)が枯渇する。すると、堆積物中のFe(III)、Mn(IV)が還元されFe(II)、Mn(II)となり湖水中へ溶出して来る。このFe(II)、Mn(II)は、秋に、湖水が循環し、深層にDOが供給されると、再び酸化されFe(III)、Mn(IV)となり堆積物へと沈殿する。 Fe(III)の沈殿は、各種無機物、有機物を共沈することが知られている。仮に、深水層中のDOMの一部が共沈により湖水から堆積物へ移行すると、湖水中の微生物ループのDOM可使性は小さくなり、堆積物中の微生物ループのDOM可使性は大きくなるだろう。 Fe(III)によるDOMの共沈現象は、分析化学的見地から、室内実験で数々研究されてきた。しかし、天然の湖沼における微生物ループのDOM可使性の観点からの研究は皆無である。昨年度は、夏季に成層し深水層が嫌気的になる、裏磐梯小野川湖の嫌気的深水層水を用い、嫌気的湖水を人工的に好気化することにより、天然に存在するFe(II)がFe(II工)に酸化されるとき、天然のDOMが共沈するかどうかを検証した。その結果、大気下24時間の攪拌実験でDOはゼロから7.6mg 1^<-1>へ増加し、Fe(II)は98%から5%へ減少した。この時、炭素で測定したDOM(DOCと呼ぶ)は32〜48%が消失した。また、大気下に48時間放置すると、DOはゼロから2.2mg 1^<-1>に増加し、Fe(II)は98%から31%へ減少した。この結果、天然に存在するFe(II)によるDOC共沈の潜在能力が実証された(Satoh et al.12006)。 本年度は、より天然現象に近い実験系で、現場で起こるであろう共沈の定量的評価を試みた。即ち、秋季、湖水の循環に伴い供給される溶存酸素でFe(II)が酸化され、Fe(III>沈殿が生成するときは、好気的上層の水と嫌気的深水層水が混合、希釈されると考えられるので、好気的表面水と嫌気的深水層水を1:1に混合し放置した。この際、3回繰り返し培養だと、用意する試料数が膨大になり準備に多大な時間を要するため、2回繰り返し培養で、4回実験を行った。結果は、共沈が起こっているように思えるが、2回繰り返し同一処理内のバラ付が大きく、統計的に有意な差は検出できなかった。実験法の改良が今後の課題である。
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