研究概要 |
琵琶湖および琵琶湖流入河川について、2004年8月に採取した試料の結果を合わせて考察した。8月は表層で配位子濃度が低く、中層で高濃度となった。生物生産の高い6月に、表層、中層共に配位子濃度が高く、生産が落ちて水温躍層が深くなる10月には、配位子濃度が表層、中層とも低下した。10月の琵琶湖における配位子濃度が9月に採取した流入河川(天野川)水の配位子濃度に近いこと、河川から供給される有機物に占める腐植様物質の割合が高いことを併せて考えると、6月の配位子濃度が高い原因は、自生性有機物由来の配位子が供給されたためと考えられる。8月の表層で低濃度となったのは、台風による河川水流入による希釈もしくは、光還元による分解と考えられる。また、河川から流入した腐植様物質の大部分は、湖水中でも分解されずに配位能をもったまま残留する可能性が高い。この配位子濃度と安定度定数を用いてフリー銅イオン濃度[Cu^<2+>]を計算すると、10^<-12>monl/l以下の極低濃度となった。 陸水中のFe(II)をフェロジン錯体に誘導し,固相抽出法によって濃縮定量した結果,2-240nmol/l程度のFe(II)が検出された。秋季の晴天時,琵琶湖表層における溶存態Fe(II)濃度およびこれが全Fe(II)に占める割合共に表面で最大値を示したことから,光還元によるFe(II)の生成が示唆された。琵琶湖表層における溶存態Fe(II)は,表面で全溶存態鉄の30%,5m以深でも20%程度と,かなり大きな割合を占めることが示された。琵琶湖へのFe(II)供給源の一つである流入河川水中のFe(II)は大部分が溶存態であった。pH,塩化物イオン濃度とFe(II)濃度の関係を併せて考慮すると,Fe(II)が常に深層地下水によって河川に供給されていることが示された。琵琶湖におけるFe(II)の挙動は未解明であり、配位子として、また光還元反応の媒体としての有機物の効果が注目されることから、研究を継続する予定である。
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