研究概要 |
申請課題に基づき,平成16年度から平成17年度にかけては,干潟土壌のリン酸加水分解分解酵素がタンパク質負荷によって活性増加することに着目し,負荷タンパク質の動態について生化学的に解析を行った。その結果,負荷タンパク質が干潟土壌によって加水分解されることを電気泳動的につきとめることに成功した。さらにリン酸加水分解酵素のタンパク質による活性誘導は,河川上・中流域に比較し,干潟土壌において著しく高いことと同時に,タンパク質加水分解の電気泳動パターンから,河口干潟においては河川上流・中流域とは異なるプロテアーゼの存在を示す結果が得られた。 平成17-18年度にかけては,世界で初めて土壌中プロテアーゼを直接同定する手法の開発に成功し,広島県竹原市を貫流する賀茂川の河口干潟を対象に,土壌プロテアーゼ種の平面的な分布,及び表層から下層土壌も含めたプロテアーゼの3次元的な分布調査を行った。その結果以下の興味ある結果が得られた。 1.賀茂川河口干潟におけるプロテアーゼ種の分布パターンは,4つのタイプに分類される。 2.分類された4タイプは干潟土壌の生態的環境を反映している。 3.フォスファターゼ活性が高い領域には特徴あるプロテアーゼが存在することが示された。 以上本課題に対する研究結果から,特有のプロテアーゼを分泌する微生物種の同定が,タンパク質のフォスファターゼ活性誘導機構の解明に重要であることが示され,今後の研究への進展に繋げることができた。また本研究の成果となる2種類のプロテアーゼ分析法は今後土壌におけるタンパク質の代謝解明に大きな貢献をすることが期待され,数編のオリジナル論文とホームページによりその手法について公開がなされた。
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