研究概要 |
現在,環境問題の中でもごみ問題は,われわれにとって身近で深刻な問題となっているが,環境問題に対する人々の意識は,必ずしも実際の環境配慮行動に結びつくとは限らない。本研究では,環境配慮行動の規定因について,その要因構造を定量的にモデル化することで,諸要因と行動の関連性について検討した。 大阪府箕面市において,一人暮らしをしている19〜29歳の学生50人(男性28人,女性22人)を対象に,商品購入およびごみ排出の場合におけるごみの減量化意識に関する質問紙調査を実施した。またそれと同時に,ごみ排出の実態調査も行った。 まずごみ排出の実態調査において,連続する7日間に排出されたごみを基に,ごみの総排出量およびリサイクル実施率を算出し,それらを環境配慮行動の結果を表す指標とした。これらの測定結果およびごみの減量化意識に関する質問紙調査の集計結果から,グラフィカルモデリングによって,環境配慮行動の要因構造をモデル化した。全体的に,ごみ問題に対する意識と環境配慮行動との間には有意な相関関係が見られた。つまり,ごみ問題に対する責任感が強い人ほど,問題を深刻に捉える傾向にあり,さらに効果的な対策についても認識しており,それがごみ減量化への協力的な態度に結びついていることがわかった。特に,ごみ排出時においては,そのような協力的な態度が実際の行動に効果的に結びついており,ごみ減量化意識の高さが,ごみ排出量の減少およびリサイクル実施率の増加に寄与することが示唆された。しかし,商品購入,ごみ排出のいずれの場合にも,それに伴う手間やコストが行動を抑制していることも示された。今後の課題として,調査対象者を一般の人々にまで広げ,意識と行動の関わりについて継続的に調査する必要がある。
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