研究概要 |
大気汚染は,今世紀における克服しなければならない,もっとも深刻な課題とされている.これまでも,高度な技術を用いて大気汚染の分析が行われてきた.しかし,大気中に存在する化学物質のすべてを特定,あるいは検出することは事実上不可能である.そこで,我々はモデル微生物を用いた毒性の評価,すなわちバイオアッセイが大気汚染物質の生態系に及ぼす影響評価に適していると考えた.特に,酵母DNAマイクロアレイを用いると,汚染気体に暴露された微生物から,汚染気体の特徴や毒性に関する様々な情報が抽出できる.その基礎実験として,酵母をモデル生物として用いて,様々な気体で加圧した後,mRNAの発現特性を分析した. 本研究では,空気,酸素,窒素,亜酸化窒素,二酸化炭素などの気体を用い,酵母を高圧下で暴露した後,mRNAの発現特性を分析した.マイクロアレイ解析結果を用いたMIPSデータベースの機能別分類に従って分類した結果,二酸化炭素処理では,細胞内でシステイン,グルタチオン,チオレドキシン,メタロチオネインの合成が二酸化炭素により活発化していることから,細胞の還元修復作用が促進されている事などが示唆される.おそらく,二酸化炭素による酸化ストレスが酵母にダメージを与え,その防御機構としてこのような現象が起こっていると考えられる.他の気体についても,様々な遺伝子が誘導されたことから,本研究で提案した高圧ガス加圧による酵母DNAマイクロアレイバイオアッセイは,気体のバイオアッセイとして利用できると結論した.
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