研究課題
基盤研究(C)
近年、湾岸戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争などの地域紛争において、劣化ウラン弾が多量に使用されており、大きな国際問題となっている。ウランは、プルトニウムと同様、放射線の影響とともに、その化学毒性の強さについても昔から知られているが、その毒性発現の機構はよくわかっていない。劣化ウランの化学毒性発現機構を解明することは、地域紛争の被害住民の健康を取り戻すための重要な基礎を築くことができる一方で、原子力の利用を進める過程で生じる環境整備に関わる多くの課題を解決することにもつながると考えられる。これまでの研究で、ウランが過酸化水素と反応し、ヒドロキシラジカルを発生することを見出しているが、その反応機構は明確ではなかった。本研究では、まず、劣化ウランー過酸化水素系において、ウラン(VI)が過酸化水素によりウラン(V)に還元されるが、不均化反応を経ずに、フェントン型反応により、ヒドロキシラジカルを生成し、ウラン(VI)に戻るプロセスで説明できることを明らかにした。これをもとに、糖、アミノ酸、ポリフェノールなどの生体系物質による活性酸素消去反応の速度論的解析を行なった。また、活性酸素計測のための新規スピンとラップ剤の反応特性、とりわけ酸化反応について解析、脂溶性抗酸化物質の作用特性について解析を行なった。また、フローインジェクションシステムによる速度論解析を試みた。さらに、ウランー過酸化水素系にカテキン、タンニンなどの抗酸化物質が共存する場合のプラスミドDNA切断活性を調べ、劣化ウランが還元されるとDNA切断活性能が増加することを見出した。併せて、マイクロダイアリーシス法によるラット脳内の活性酸素消去についても解析をおこなった。これらの成果は、11編の学術論文、5件の国際学会発表、21件の国内学会発表として公表した。
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すべて 雑誌論文 (21件)
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