研究概要 |
シトクロムP450(CYP)の遺伝子の中で、CYP1ファミリーに属するものは、ダイオキシンなどによって誘導的に発現することが知られている。その発現量は環境汚染の指標となっているが、誘導の仕組みを遺伝子工学的に活用して環境モニター魚なるものを作成することが可能である。本研究では、CYP1のA、B、Cの3つのサブファミリーのうち、あまり研究がなされていないB、Cについて、ウナギおよびコイを用いて、cDNAのクローニングを行い、さらに遺伝子工学部品としての遺伝子発現調節領域のクローニングならびに解析を行った。 まず、報告例の少ないCYP1Bについて、ウナギの1B1とコイの1B1、1B2のcDNAを得た。この1B2は新奇の遺伝子である。また、論文として過去に報告が無いCYP1Cについては、ウナギの1C1とコイの1C1、1C2のcDNAを得た。コイのCYP1ファミリー遺伝子の各臓器における発現を調べたところ、1)1Aは肝、腎、腸、および鰓で誘導される、2)1B1は、肝および腸で誘導され、鰓では構成的発現(あるいは弱い誘導性)を示す、3)1B2は、調べた臓器の中では鰓でのみ誘導される。4)1C1は、同じく鰓でのみ構成的に発現している、5)1C2は、同じく腎でのみ誘導される、という興味深い結果を得た。 次に、得られたcDNAの塩基配列をもとにして、遺伝子発現調節領域のクローニングを行った。ウナギのCYP1B1および-1C1ではそれぞれ5,188および4,615塩基対、コイのCYP1B1、-1B2、-1C1、-1C2ではそれぞれ690、769、3,036、1,176塩基対の遺伝子発現調節領域を得ることができた。コイのCYP1B1および-1B2については、さらなる上流域のクローニングを試みているところである。 以上、薬物誘導性とともに様々な臓器特異性を示す遺伝子発現調節領域を得ることができた。
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