研究概要 |
有機溶媒を使用せず、空気ルミネッセンスを利用して環境ラドンを測定する装置を設計し、構築を試みた。検出箱は、R331型光電子増倍管(photomultiplier tube, PMT)2本を対向する位置に設置し製作した。回路系は、2本のPMTが同時に信号を発した時のみ、マルチチャンネルアナライザ(MCA)が信号を受け入れる様に、一方のPMTの信号は増幅後MCAのADC inに接続し、他方からの増幅信号はタイミング回路を通しgate信号としてMCAに接続した。 α標準線源(^<241>Am)を用いたこの測定系の計数効率は約1%であった。1本のPMTによる計数効率(約20%)に比べかなり低値であるが、低バックグランドで変動もなかった。検出箱に反射材を設置することで計数効率は2.4%に上昇した。 既知量ラドンを用いた測定系の計数効率は反射材なしで1.29%、反射材の設置で7.38%に上昇した。α標準線源による計数効率の約3倍であり、α粒子を放出するラドンの娘核種が関与したためであることが示唆された。 ルミネッセンスは、気体分子がα粒子の通過でイオン化あるいは励起された結果放出されるため、単体気体(窒素、酸素、アルゴン)によるルミネッセンス計数効率の検討を行った。液体シンチレーションシステムを用いたルミネッセンス計数効率は、窒素では、空気に比べ、60.2%という高計数効率が得られ、酸素では最も低かった(28.2%)。そこで、環境ラドンの測定試料として、空気から極低温小型冷凍機を用いて製造された液体窒素(LN_2)に着目した。石英ビーカーに入れたLN_2を構築した測定系で測定すると、経過時間とともに計数値は減少するが有意な計数値が得られた。LN_2の製造は、原料である空気から酸素・炭酸ガス等を除去し液化を行っている。このため、製造機付近のラドンが濃縮され(約600倍)、LN_2に含まれる可能性が考えられる。この製造機付近のラドン濃度を活性炭検出器により測定すると、屋外ラドン濃度程度の低い値(6.3Bq/m^3)であり、この系によるラドン濃度測定が可能であることが示唆された。
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