研究概要 |
1.宇宙線電離成分の高度変化 エベレストおよび周辺地域(地滋気中緯度地域)における宇宙線電離成分の1cm線量当量率の実測データを得た.この結果,標高をZ(km),その1cm線量当量率をH_i(Z)とすると,以下の式で再現できることを明らかにした. H_i(Z)=20.3exp(0.489Z) 2.宇宙線中性子成分の高度変化 エベレストおよび周辺地域(地磁気中緯度地域)における宇宙線中性子成分の1cm線量当量率の実測データを得た.この結果,標高をZ(km),その1cm線量当量率をH_n(Z)とすると,以下の式で再現できることを明らかにした. H_n(Z)=4,00exp(0.616Z) また,高地民族シェルパの石造りの建物内では,以下の式で再現できることを明らかにした. H_n=3.11exp(0.628Z) この結果,石造りの建物による宇宙線中性子成分の遮蔽は約25%であることも明らかになった. 3.大地放射線の変化 エベレストおよび周辺地域(ルクラーカラ・パタール間,ルクラーゴーキョピーク間)における大地放射線のガンマ線による1cm線量当量率の変化について実測データを得た.また,大地放射線のガンマ線のエネルギー解析から,1cm線量当量率をウラン系列,トリウム系列,カリウム40の3成分に分離し,それぞれの成分による1cm線量当量率の変化も明らかにした.膨大な実測データであり,簡潔に紹介するのは難しく研究成果報告書に委ねるが,世界で初めての貴重な実測データであり,地質鉱物学者と共同で実測データを解析する必要がある. 4.将来展望 エベレスト地域以外のヒマラヤにおける大地放射線のガンマ線による1cm線量当量率の実測データの蓄積,地磁気低緯度地域および同高緯度地域における宇宙線の実測データの蓄積が望まれる.
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