研究概要 |
本研究では微生物認識能を有する生分解性プラスチックを創成し、特定の微生物を認識する構造を利用して抗菌性を発現させこと、または、分解微生物を認識して分解を促進するなどの新機能発現を目指した。その結果、主として以下の3点についての知見が得られた。 (1)真菌類が生分解性プラスチック表面に吸着する際にその表面のマイクロスケールの凹凸構造を認識し、特に10〜30マイクロメーターの多孔質構造と格子状溝構造に吸着能を有することがわかり良好な分解性を示した。さらに、20マイクロメーターの綾織構造を接溶融転写した生分解性高分子表面へ、安全性の高い麹菌が特異的に吸着する現象を見出した。麹菌が吸着した後は大腸菌が吸着しなかったことから安全性の高い麹菌を選択吸着させて、生分解性プラスチックの衛生的な分解が可能であることが示唆された。 (2)上述の麹菌の付着性、抗菌性に関する知見を基に、麹菌を織物へ付着させ新しい機能性素材の作成を試みた。平織、綾織、サテンに麹菌を付着させた結果、綾織に対してのみ麹菌の良好な付着が認められた。さらに、綾織に麹菌を付着させた場合の抗菌性評価を行った結果,麹菌を付着させた綾織の基布には大腸菌は付着しなかったが,オリジナルには繊維表面への大腸菌の付着(集落)が見られた.このように,麹菌を綾織の基布に付着させることにより,抗菌性を付与できることを見出した. (3)20μmメッシュの綾織構造を溶媒処理して1μm以下の凹凸を付与すると擾水性が得られた.さたに、植物のクチクラ層からワックッス成分を抽出し、この構造に付与したところ,高い滑落性と細菌類に対する抗菌機能が発現した.これらの微生物認識試料は酵素および土壌中でしばらく分解が抑制されたが一定期間後に速やかに分解することが分かった.
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