研究課題
基盤研究(C)
1.強磁性α-TDAE-C60の格子定数の圧力変化とバルク磁性の加圧による制御強磁性であるα相の強磁性は加圧により消滅し、約7kbarの圧力で非可逆的に高圧相へ転移すると報告されている。高圧相はC60がポリマー鎖を形成していると考えられている。ダイアモンドアンビル(DAC)を用いて、格子定数の圧力変化を測定した。圧力は本研究で開発したルビー蛍光用顕微鏡を用いて測定している。その結果、加圧に伴い、C60鎖間の格子定数が鎖方向と比べて大きく収縮することを初めて明らかにした(圧縮率はおよそ0.042Å/kbar)。一方、0.6GPa以上の圧力では高圧相への1次相転移を反映してX線回折像が劇的に変化することが明らかになった。しかし、高圧相の構造決定には至っていない。また、加圧による強磁性の抑制効果は電子スピン共鳴(ESR)による測定が報告されているのみで、試料全体から生ずるバルクの磁性が加圧により制御されるかどうかを確定する必要があった。本研究ではピストンシリンダー型圧力セルを用いSQUIDによる磁化の圧力変化を測定した。その結果、試料の飽和磁化および転移温度が加圧により減少することが明らかになり、バルクの効果であることが確定した。2.非強磁性α'-TDAE-C60の反強磁性転移TDAE-C60には二つの多形が存在することが知られている。As-grown結晶であるα'相は強磁性を示さず、その低温における磁性は明らかにはなっていなかった。これを確定するために低周波ESRとカンチレバーを用いた高感度磁気トルク計を新たに開発し測定を行った。その結果、従来報告されている結果と異なり、α'相は7K以下で反強磁性状態へ転移することがわかった。これらの多形では低温構造が異なることが我々の構造研究から明らかとなっており、構造と磁性の相関、特にフラーレン分子間の配列が分子間の磁気相互作用に重要であることが本研究から確定したことになる。フラーレン磁性体における磁性機能出現に対する新たな知見を得ることができた。
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