研究概要 |
本研究は,ナノ構造シリコン材料(ポーラスシリコン)に直線偏光を照射することで光学異方性を誘起し,その異方性発現のメカニズムを解明するとともに機能性デバイスへの応用を図ることを最終的な目的としている.本補助金の交付期間内において得られた主な成果は以下の通りである. 1.屈折率異方性の確認と定量的評価 これまでは発光(フォトルミネッセンス)の直線偏光度に現れる異方性のみが確認されていたが,本研究において,屈折率の異方性も確認することができた.屈折率の異方性はその方向が直線偏光度の異方性とは90度ずれており,これは屈折率においては比較的大きな構造が,発光においては比較的小さな構造が主に関係しているためと考えられる. 2.発光異方性の励起波長依存性 発光の直線偏光度異方性が大きな励起波長依存性を持つことが確認された.これは高い直線偏光度を示す酸化物の発光の影響ではなく,異方性の深さ方向依存性によるものと考えられる. 3.赤外レーザー光照射による大きな異方性の形成とシミュレーションによる評価 照射光源として比較的高強度のNd:YAGレーザー(波長1.06μm)を用いたところ,非常に大きな直線偏光度異方性を得ることができた.線形振動子が平面内に分散した2次元モデルによりシミュレーションを行い,この実験結果を十分再現できることを示した. 4.試料作製条件の影響 フッ化水素酸濃度の低減化を試み,0.1%の濃度でも十分な可視発光が得られることを明らかにした.これをもとに直線偏光度異方性の陽極化成電流密度依存性を評価した.低電流密度では異方性の形成が確認できず,電流密度に大きく依存することがわかった.
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