研究概要 |
本研究の主要な成果は以下のとおりである. 1.都市域河川の解析:都市中小河川ならびにその周辺エリアの増水,浸水による危険性を表現できる解析モデルを開発した.都市河川の流域を考え,一次元の雨水流出解析と河道の洪水解析,内水氾濫解析を統合したモデルを構築し,長崎県本明川流域の諌早市域の危険度を解析したところ,支川での水位上昇とそれに伴う内水氾濫が深刻になることが明らかとなった.また,雨水流出と洪水氾濫を平面二次元氾濫モデルで一体化して扱うモデルを開発・整備し,京都府宇治市の井川流域に適用した.その結果,短時間豪雨により河道内で水深が急激に上昇し,思わぬ水難事故に遭う可能性があることが示された.さらに同様の手法を長崎市内の中島川流域に適用し,洪水氾濫時の市街地の危険エリアを推定する手法を提案している. 2.地下街の浸水解析:地下街をいくつかの水槽が連結した場ととらえ,ポンド(タンク)モデルを基にした浸水モデルを構築し,地下街内での浸水の流動および浸水深の時間変化を予測できる手法を開発し,福岡市内,京都市内の地下空間に適用した.その結果,福岡市内では,御笠川の氾濫時にJR博多駅地下街の東側が危険であること,京都市内では,鴨川の右岸からの溢水時に御池地下街の東側が危険であることが明らかとなった.また多層化した地下空間の最深部に位置する地下鉄のプラットホームがとくに注意を要する箇所であることも確認された. 3.地下浸水時の避難:地下空間は面積(容積)が小さいために,浸水時には水深が短時間で上昇するとともに,避難においては,地上への階段や,地下室のドアが障害箇所となる可能性が大きい.実物大膜型を用いた実験結果より,地上水深が30cm相当での流入流量で,成人が階段を上れる限界状況となり,押し開きのドア前面の水深が40cmを超えると,成人男性でも.ドアを開けることが困難となることがわかった.
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