研究概要 |
本研究では、提携に制限のある協力ゲームについて、その特性を論じ、ゲームの解すなわち合理的な利得分配の方法について考察した。提携における制限は実現可能の集合である実現可能提携システムとして捉えられる。これはプレイヤー集合Nに対し{0,1}^Nの要素である各提携Sに対し1(実現可能)、0(実現不可能)の2値をとる関数f:{0,1}^N→{0,1}を考えることと同じである。 本研究では、このfの2通りの拡張について考えた。1つ目の拡張は値域を{0,1}から[0,1]の連続区間にするものである。すなわち関数f:{0,1}^N→[0,1]を考え、これをグレード付き実現可能提携システムと呼んだ。この拡張により、各提携が単に実現可能か否かを考えるだけでなく、その実現可能性の程度を扱うことが可能になった。グレード付き実現可能提携システムに基づく、提携の実現度を考慮に入れた新しいゲーム(制限ゲーム)の定義とその性質を論じた。制限ゲームを通じてこの状況でのゲームの解を考えることが可能となった。 2つ目の拡張はfの定義域を{0,1}^Nから[0,1]^Nに拡張するものである。すなわち関数f:[0,1]^N→{0,1}を考え、これを実現可能ファジィ提携システム(FFCS)と呼んだ。これは各プレイヤーの提携への参加度を考慮に入れたものであり、提携が実現できるか否かが各プレイヤーの他のプレイヤーとの協力の意志の程度に依存して定まるような状況を扱うことが可能となった。ファジィ協力ゲームとFFCSの組からのファジィ制限ゲームの定義とその性質、ファジィ制限ゲームを用いた解の提案とその特徴づけ、さらにはファジィ制限ゲームを通じない直接的解の提案とその性質について研究成果が得られた。今後はさらなる理論的発展と、最適化問題から派生する具体的協力ゲームへの成果の適用を考えていく予定である。
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