研究概要 |
イノベーションは経済価値をもつ技術革新である。企業の持続的発展のためには,特定の技術の開発に注力するだけではなく,様々な経営資源を結合し新製品や新サービス,新プロセスとして,イノベーションを継続的に実現することが重要である。本研究では,イノベーションを生み出すプロセスに着目し,様々な企業事例を検討し,イノベーション創出の仕組みを明らかにする構造モデルを提案する。モデルは,組織風土と文化,マネジメント行為,実践行為,組織の仕組み,蓄積される知識,他者の共感など様々な要素の複雑な相互関連を扱う必要ある。 本研究では,このモデルをイノベーションエンジニアリングフレームワークと呼ぶビジネスフレームワークとして整理した。イノベーションエンジニアリングフレームワークは,イノベーションを醸成する組織の仕組みを実現する経営ツールである。イノベーションエンジニアリングフレームワークは、プロジェクトリーダなどのミドルマネジメント層が、与えられた環境の中でイノベーション創成に向けた実務活動を行うための環現理解と実践的行動の枠組みになる。イノベーションエンジニアリングフレームワークは,イノベーションプロセスの組織構造,イノベーションの実務活動に必要な6項目一経営層による環境設定,実務での実践活動,組織メカニズム組織文化組織内に蓄積された情報・データ,他者との共感共有一,そしてそれらの動的な関係の定義で構成される。 イノベーションエンジニアリングフレームワークで企業活動を整理することで,イノベーションの成功例や失事例の分析や定量的把握が可能になる。また,実行中の企業活動に対しては,イノベーションの創出に向けてどの要素を強化すべきかが明らかになる。今後は,定量的に把握された企業のイノベーション活動と,イノベーション実現の可能性との相関関係や,生み出された経済価値どの相関関係を明らかにする必要がある。
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