研究概要 |
1.2003年7月26日宮城県北部地震の被害調査に基づいた住宅の室内被害と構造被害の関係について 木造建物の耐震基準が異なる年代区分(4区分)ごとに,その室内被害と構造被害について分析を行った結果,新しい建築年代の建物ほど構造被害は減少する一方,家具転倒の室内被害は年代区分にほぼ関係なく発生していることを明らかにした。 2.2003年7月26日宮城県北部地震における家具転倒に関する被害率関数の構築について 被災域の面的なアンケート震度調査に基づいて,家具転倒に関する被害率関数を構築した結果,震度を強震指標とした岡田・鏡味(1991)による既往の被害率関数と極めて調和的である結果が得られた。また,中高層集合住宅の床応答に対して被害率関数を適用するために,強震指標を計測震度から最大速度へ変換した。 3.想定宮城県沖地震に対するモデル街区の家具転倒被害による負傷者発生の予測について 仙台市内のモデル街区を対象に,想定宮城県沖地震による中高層集合住宅の床応答を考慮した世帯ごとの家具転倒被害とそれによる負傷者発生の予測を行った。強い床応答に曝される室内人口の増加により人的被害ポテンシャルが増加することについて検討した。 4.家具転倒の防止対策による人的被害の軽減効果の検討について 転倒防止対策が施された場合の被害率関数を評価し,モデル街区に居住する住民がランダムに対策した場合と,より強い床応答に曝されている住民が積極的に対策した場合について,同じ対策率でも被害低減効果に大きな差が生じることを示した。 5.被害低減効果に関する情報が地域防災力の高度化に与える影響について リスクコミュニケーションのツールとして被害低減効果を含む防災カルテについて,文部科学省防災研究成果普及事業と連携して試作,検討を行った。その効果の定量的な評価については,今後の研究の展開に負うところが多い。
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