研究概要 |
本研究は,地震時ライフライン機能の被害と復旧過程を概略的に把握する方法論を開発し,これに基づいて「広域地震災害マネジメント」の支援を目指したものである.まず,既往研究の成果である地震時ライフライン機能の予測モデルを拡張し,震度レベルごとのライフライン機能の復旧予測モデルを構築するとともに,震度曝露人口と組み合わせることによって,広域被害対応のためのライフライン機能障害と復旧過程の評価手法を提案した.想定東海地震,想定東南海地震,および,それらの連動地震による東海地方の広域震度分布を推定して,ライフラインの広域被害と復旧過程の予測を行った. 次に製造業を対象として,供給系ライフラインの機能停止が及ぼす広域的な影響評価を行った.供給系ライフライン停止パターンごとの製造業の機能充足度を定量化し,停止パターン生起確率の時系列予測モデルと組み合わせて,各業種の機能充足度の時間的推移を推定するモデルに拡張した.東海地方の震度分布と,事業所・企業統計調査による従業者数データ,および工業統計調査による製造品出荷額のデータを考慮して,製造業の機能的充足度の時間的推移と経済的影響をマクロ的に推定する方法を開発し,その数値計算例を示した. さらに,製品受注から製品製造・輸送に至るサプライチェーンをシステム・ダイナミクスでモデル化し,ライフライン機能停止や輸送能力低下などの影響要因を組み込んで,地震時機能水準をミクロ的にシミュレートできるツールを開発した.想定東海地震の推定震度分布を入力条件とした数値計算例を示すとともに,各種の対策を行った場合の効果を比較検討した. 以上により,東海地方の製造業が受ける経済的影響をマクロ・ミクロの両観点から捉えることができた.ライフライン機能停止の影響を踏まえた上で,事業継続計画策定など広域地震災害マネジメントの実践のために有用な情報を提供することが可能となった.
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