研究概要 |
霧島火山は,鹿児島・宮崎両県の県境に位置する第四紀の複成火山であり,歴史時代の噴火記録も多く残されている活火山である.現在は比較的静穏な状態にあるが,明治・大正期にはさかんに噴火していたことが知られている.しかし,その当時の噴火活動の実態についてはほとんど知られていなかった.本研究では,この明治・大正期における霧島火山の噴火資料収集と,それらを用いて当時の火山活動の実態解明を行うことを目的とした. 当時の霧島火山の噴火に関する文書や画像資料を可能な限り収集し,データベース化した.これらの中にはこれまで知られていなかった貴重な資料が多数含まれていた.霧島火山の1800年代後半から1900年代前半の噴火の実態について,集められた写真,絵画,新聞記事,日記,目撃者の談話などから検証した.その結果,当時の霧島御鉢火山は爆発的な噴火を繰り返し,周辺の広い範囲に火山礫や火山灰を降らせていたことがわかった.これらの活動によって人的被害も生じていたが,それらは,登山客や猟師など火口に近いところに偶然いた人たちであった.御鉢火山には現在も多くの登山・観光客が訪れており,噴火の際には,まず,これらの人たちの速やかな避難が重要であることが明らかとなった.地域防災の啓蒙,教育のために宮崎県総合博物館で今回得られた資料の一部を展示・公開した.今後も明治・大正期の霧島噴火に関する展示を行い,活火山としての霧島火山を紹介して,噴火防災意識の向上に資することができた.
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