研究概要 |
ラット肝ホモジネート9000g上清(S-9)を用いて,内分泌かく乱化学物質であると報告されているあるいは疑われているDDT類縁体の代謝実験を行った.レシチン人工膜を用いたハイスループットスクリーニング法により,合成した代謝化合物,市販の農薬標準品,医薬品および一般的な有機化合物の人工膜透過性評価を試みた.高疎水性化合物に関しては,非撹拌水槽の影響などにより,通常の測定方法では測定が困難であったため,測定中撹拌することなど,新たな測定条件を確立し,その条件で人工脂質膜透過係数を測定した.ある程度の疎水性を持つ化合物については,その人工膜透過係数を,1-オクタノール/水系の分配係数,pK_a,あるいは水素結合受容性・供与性基表面積などの物理化学的パラメーターを用いて解析し,申請者らがペプチド類縁体において得た結果式とほぼ同一の良好な解析式を得ることができた.従って,得られた解析式は,化合物構造に依存せず,普遍的な式であることが示された.しかし,非常に高い疎水性を持つ化合物については,撹拌した場合,撹拌しないときより透過係数は予測値に近づいたが,非撹拌水槽の影響を完全に除去することは困難で,撹拌しても透過係数の実測値の方が予測値よりやや低くなった.しかし,Caco-2細胞透過性を予測するには,実測した人工膜透過係数が適当であることがわかった. さらに,ABCトランスポーターの一つで,排出ポンプ機能を持つヒトP-gpタンパク質を発現させた昆虫細胞から精製したP-gpタンパク質を用いて,内分泌かく乱化学物質およびその代謝物,農薬,ペプチド類縁体などがP-gpの基質になるかどうかの検討を行った.さまざまな構造の化合物についてスクリーニングを行ったところ,数種のペプチド類縁体および農薬が,P-gpタンパク質の基質となることが,初めて明らかとなった.
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