研究概要 |
コドン三字目のグアノシンとアンチコドン一字目の修飾ウリジンの水素結合様式を調べるため,mRNAに修飾グアノシンを導入することを検討した.まず,6-チオグアノシン5'-リン酸を酵素的に合成することができた,また,イノシンおよび6-チオグアノシンを転写反応でRNAの特異的な位置に導入することができることを示した。 さらに,RNAを連結して,翻訳可能なmRNA分子を調製することを試みた.従来法のT4 DNAリガーゼやT4 RNAリガーゼを用いたRNA連結法では,収量や特異性の問題で,翻訳活性測定に用いるほど十分な量のmRNA分子を得るのが困難だった.最近報告されたT4 RNAリガーゼ2を用い,これで連結したRNAを無細胞タンパク質合成系に導入したが,これについては全く翻訳されないことがわかった.この酵素は,報告されていない活性をもっているものと考えられる.一方,コムギ胚芽RNAリガーゼを用いると,高収率でRNAを連結することができることがわかった.しかし,この方法では連結部位の2'位が水酸基でなくリン酸になる.水酸基に変換する反応が十分進行しているか確認する方法の確立が今後の課題となった. 一方,研究期間中に,リボソーム上での修飾ウリジンとグアノシンとの塩基対の形を直接解析した結果が報告されたが,これは,本研究の作業仮説と一見矛盾するものの,十分両立するものであった.そこで,本研究の作業仮説の背景を論文にまとめ,発表した.
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