研究概要 |
薬用植物キダチアロエ(Aloe arborescens)より、オクタケタイド及びペンタケタイドの骨格を構築する2種の新規III型ポリケタイド合成酵素(PKS)のクローニングと機能解析に成功した。アミノ酸レベルで互いに90%の相同性を示すオクタケタイド合成酵素(OKS)とペンタケタイドクロモン合成酵素(PCS)は、8分子あるいは5分子のマロニルCoAを基質として、SEK4b及び5,7-dihydroxy-2-methylchromoneをそれぞれ主生成物とする。活性部位キャビティを構成するThr197が、OKSではGlyに、一方、PCSにおいてはMetに特徴的に置換されていることに着目し、このアミノ酸残基に部位特異的変異を導入することにより、酵素機能に及ぼす効果を検討した。まず、ペンタケタイドを生成するPCSについて、Met197をOKSと同じくGlyで置換したところ、このM197G点変異酵素がSEK4bを生成することを見出した。即ち、驚くべきことに、単一アミノ酸残基の置換によって、PCSからOKSへの酵素機能の変換がなされたことになる。一方、逆に、OKSにG197M点変異を導入した場合、オクタケタイド生成能が完全に消失して、代わりに新規ペンタケタイド2,7-dihydroxy-5-methylchromoneが生成した。また、G197Tではヘキサケタイド6-(2,4-dihydroxy-6-methylphenyl)-4-hydroxy-2-pyroneの生成が、さらに、G197Aではヘプタケタイドaloesoneの生成が認められた。この結果、活性部位キャビティを構成する単一アミノ酸残基の置換によって、しかもその側鎖の立体的な大きさに単純に依存して、マロニルCoA縮合数と生成物特異性が決定されることが明らかになった。
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