研究概要 |
本研究では抗がん作用あるいは長寿・延命効果が伝承されている薬用植物を選び,それらから単離した化合物について基底膜浸潤阻害作用,MMP産生抑制作用およびヒト白血病細胞における分化誘導作用について実施し,以下の成果を得た. タイ天然薬物Erycibe expansaにヒト繊維肉腫HT1080細胞の基底膜浸潤に対する阻害活性を見出した.その活性成分の探索を行ったところ,deguelin, tephrosin, rotenoneおよび12a-hydroxyrotenoneなどのロテノイドに有効性を見出した.さらに,メカニズムについて実施した結果,MMP-9の産生を阻害することが明らかになった.また,これらの化合物は浸潤抑制活性を示した培養24時間までは細胞の増殖抑制活性をほとんど示さなかったが,48時間以上培養することで細胞の増殖抑制活性が認められた.さらに,イソフラボンgenisteinにはヒト前骨髄性白血病細胞株HL-60に対する分化誘導能が報告されているが,NBT還元能をHL-60の分化誘導マーカーとしたアッセイ系においてdeguelineやtephrosinにもgenisteinとほぼ同程度の活性を有することが明らかになるなど,新しい抗がん薬のシーズとして期待できた.さらに,多数のフラボノイドについて検討したところ,isoquercetinなどのフラボノイドに有意な抑制活性が認められた. さらに,Nuphar pumilumを基源とする川骨から単離した含硫黄セスキテルペン二量体アルカロイド類に強力なアポトーシス誘導活性を見出し,構造活性相関を明らかにするとともに,作用機序に関する知見を得た. その他,がんに有効と伝承されているNigella sativaから新規ジテルペンアルカロイドnigellamine類を単離・構造決定した.また,大良姜に含まれる1'S-1'-acetoxychavicol acetateおよびその誘導体に核内転写因子NF-κBの阻害活性などが見出され,抗腫瘍活性との関連性が推察されるなど,研究課題の当初計画をほぼ達成したものと考えられる.
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