研究概要 |
多置換ピペリジンは、インドールアルカロイドを含む多様な生物活性アルカロイドの単位構造と位置づけられるが、多置換ピペリジンの立体化学を制御した効率よい合成法は必ずしも確立されていない。我々は、アルデヒドテルペノイドによる加水分解酵素阻害機構を解明する過程において見出した、素速い6π-アザ電子環状反応を基盤として、この反応をアルカロイド合成における新たな合成戦略とし、光学活性多置換ピペリジンの効率よい合成法の確立を目指し、主に以下の成果を得た。(1)鎖状オレフィンおよび様々な芳香環を持つビニルメタル、アルデヒド基を持つビニルヨウ素化合物、キラル窒素供給源の三者を混合し加熱するだけの操作により、2ヶ所で立体制御しながら4ヶ所で結合形成させ、ワンポットで2,4,6-置換ピペリジンの合成に成功した。(2)次いで、2,4,6-置換ピペリジンを基本骨格とするインドリチジンアルカロイド、デンドロプリミンの不斉全合成を達成した。(3)4置換ビニルヨウ素化合物とインドール環を持ったビニルスズ化合物から、インドール環の2位および3位にアザトリエンを形成させ、その不斉アザ電子環状反応における立体選択性を検討した。その結果、1位における嵩高い保護基の影響が不斉アザ電子環状反応の立体選択性に大きく影響することが明らかとなった。この様な知見の下に、3カ所での立体化学を制御した不斉アザ電子環状反応を実現し、2,4,5,6・置換ピペリジン誘導体の立体選択的合成に成功した。さらに、(4)確立した2,4,5,6・置換ピペリジン誘導体合成法を用いて、一炭素の増炭、インダノール基の除去、プンメラー反応によるC環の構築、官能基変換を経て、8行程で(・)・コリナンテイドールの不斉全合成を達成した。
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