研究概要 |
本年度は,PC12細胞の突起伸展促進を指標に天然物由来の神経栄養因子活性物質の探索と,神経突起伸展促進活性天然物ホーノキオール,ネオビブサニンならびにタアルミデインの合成研究と作用機序解明研究を引き続き行った. 1.PC12細胞の突起伸展促進活性を指標に植物成分をスクリーニングした結果,ヤマブシタケから活性化合物としてエンドパーオキシ基を持つエルゴステロール誘導体を単離同定した.本化合物は,PC12細胞の突起進展を誘導するだけでなく,ラット大脳皮質初代培養神経の突起伸展を促進した.本化合物は今まで細胞毒性のみしか検討されていなかったが,今回,神経突起伸展促進活性が初めて確認されたことから,両活性の相関が今後の検討課題である.また,ゴマギから活性化合物としてネオビブサニンAとBが同定されたのに加え,新規ネオビブサニンN, M, Lが新たに見出された. 2.ホーノキオールの蛍光プローブを調整し,共焦点レーザー顕微鏡下での神経細胞に対する分子動態が検討された.その結果,ホーノキオール蛍光プローブは速やかに神経細胞内に取り込まれ,細胞膜内と細胞質の特定部位に局在化することが明らかになった.また,ホーノキオールとの競合実験において,ホーノキオールはホーノキオール蛍光プローブと同じ部位に結合している可能性が示唆された. 3.タアルミデインの高立体選択合成が達成され,その絶対立体配置を(23,3S,4S,5Sと決定できた.今回開発した方法論は可能な全ての立体異性体の合成に道を拓いた. 4.ネオビブサニンの合成研究も順調に進み,連続パラジウム触媒反応による六員環骨格の合成法が確立できた. 三種の活性化合物の神経栄養因子活性発現作用機序の解明は,各種蛍光プローブを活用した非破壊的手法によって標的分子を明らかにする生物有機化学研究へと展開している.
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