研究概要 |
ミツバチ類の社会性行動を司る化学コミュニケーションと社会性行動解発因子 ヒトなど動物に認められる社会性行動や個体間コミュニケーションの発現・獲得・発達過程を知ることは重要である.集団における社会性行動の成り立ちを解明する目的で,日本の固有種ニホンミツバチApis cerana japonica Rad.(Acj)と,モデル生物のセイヨウミツバチApismellifera L.(Am)を用いた.実験は,様々な社会性行動を解発する情報化学物質と,寄生ダニ戦略(異個体間衛生グルーミング行動)および,寄生ガ対策(異物認識-排除行動)について行った.結果:Acj群の巣門付近では,働き蜂による異個体間グルーミング行動が頻繁に観察された.室内生物試験において,Acj働き蜂が衛生グルーミング行動を引き起こすダニ由来の情報化学物質を機器分析したところ,ダニの抽出物からはC14,16,18などの脂肪酸類とそのエステル類・炭化水素類が検出された.そこで,野外の自然群を用い,自然状態により近い環境で,ダニ由来の化合物に対する巣門付近の働き蜂の応答を調べた.巣門前の野外生物試験で,Acj働き蜂はダニ由来の物質に対して,対照区より多くの個体が反応した.試料に対して,集まる・触角で触る・繰り返し戻ってくるなど,試料をチェックする行動は,対照区と比べて有意に多く認められた.ミツバチ類の社会性行動解発因子を同定した.
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