研究概要 |
保存株と新規分離株を合わせた1110株について,以下の実験を行なった. (1)従来法の遺伝子型(25S genotype : A, B, C, D, E)の決定 (2)新規遺伝子型(ALTS)の決定 (3)25S genotypeについての分離源別解析 (4)従来法による遺伝子型(A, B, C, D, E)毎の薬剤感受性試験 分離株数の多い日本,ブラジル,タイの3カ国に絞り,分離国別に25S genotypeとALTSの相互関係を調べた.25S genotypeでは,日本とブラジルが似たパターンを示し,タイとは明らかに区別された.ALTSでの比較も同様の区別がなされたが,3者を組み合わせて解析すると各国固有のパターンであることが判明した.つまり日和見真菌の代表であるカンジダ・アルビカンスには地域多型が強く示された.ALTSでは,25S genotypeよりさらに細分した結果を示し,これらの組み合わせにより株の個体識別が期待できた.分離源別解析により,タイ,ブラジルの内臓由来の菌株にgenotype B, Cが多い理由として,AIDSとの関連が示唆された.薬剤感受性試験の結果は,25S genotype毎の明らかな差は認められなかったものの,アゾールに耐性を示す株も見いだされた.文献的には,genotype B, Cに耐性株が多いと言う報告もあり,さらにAIDSとの関係を支持するものと思われた. 分子多型の指標として用いた25S genotypeとALTSは全く別の領域をコードするものでおそらく相互に関連性は無いと思われるが,このような2種類の指標を用いて行なった今回の分子多型解析の結果は、主要3カ国の比較において明らかなる差を示しており,今後これらがカンジダ・アルビカンスの多型解析に多いに役立つことが示された.
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