研究概要 |
岩手県・秋田県より沖縄県に至る全国の照葉樹林約200ヶ所の調査を行った。現地調査の結果および各種文献を用いて,照葉樹林構成種を定義し,国内の種数が1066種に達することを明らかにした。照葉樹林構成種の各都府県別の分布状況,環境省および各都府県のレッドリストのランクを調査し,その結果を一覧表にまとめた。また,照葉樹林の分布の中心である南西諸島においては各島ごとに照葉樹林構成種の分布状況,レッドリストのランクをまとめた。これらの表によって各都府県別,島別の照葉樹林構成種の多様性が明らかとなった。照葉樹林構成種の各都府県別の種数と各都府県のもっとも温暖な地点の最寒月の月平均気温とは正の強い相関が認められ,照葉樹林の種多様性は低温に強く制限されていた。国内の原生状態あるいはそれに近い照葉樹林については地名,面積,自然性,地形図名,優占種,天然記念物指定,海抜などを記載し,照葉樹林分布地のデータベースを作成した。なお,天然記念物等に指定されている照葉樹林については自然性の低い樹林,二次林であっても参考資料としてとりあげた。地点数は約550に達した。原生状態,自然状態などの照葉樹林の自然性を評価する指標としては,DBHと着生植物の種多様性がもっとも優れているが,その根拠となるDBHと着生植物の種多様性の対応関係を明らかにし,その成果を3本の論文にまとめた。多様性が高い照葉樹林の保全対策について「植生管理学」(朝倉書店)にまとめた。
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