研究課題
基盤研究(C)
アメリカスが大航海時代以降ヨーロッパとアフリカの影響を受けて、どのような文化変容を遂げていったかを知る一つの手掛りとして、現在のアメリカ合衆国と英語圏カリブ地域の黒人と先住民の残した、18世紀のテクストを中心に考察した。当時西洋文化が主流となっている社会において、英語で著作を残した人びとは多少とも西洋文化とキリスト教を受け入れた人たちであり、著作の数はひじょうに少ない。また、著者をめぐる歴史的事実なども不明な点が多く、空白部分の多いテクストである。考察では、それらの人びとの先住民や黒人としての自己認識が、西洋文化受容とどうかかわっているのかを主要な関心の対象として、18世紀のアフリカ生まれの合衆国詩人フィリス・ホィートリー、合衆国先住民サムソン・オッカム、ジャマイカ黒人フランシス・ウィリアムズのテクストを検討した。さらに、その後の19世紀や20世紀の黒人・先住民テクスト研究を合わせて行い、時代の変化の中でのそれぞれの西洋文化とのかかわりを、メアリ・プリンス、メアリ・シーコウル、チャールズ・イーストマン、フレデリック・ダグラス、トゥパック・シャクール、アール・ラヴレスについて考察した。18世紀テクストの特徴は、西洋的であることで、表面的には、先住民らしさが窺われず、また西アフリカ由来の黒人文化伝統とは無縁であるように見える。だが、これは20世紀の黒人と先住民の場合も共通であるが、主流社会へ参入すればするほど、非西洋人であるために差別や偏見にぶつかり、かえって著者は先住民や黒人としての自意識を深めていく様子が窺われる。見かけ上の西洋文化志向にもかかわらず、また見かけ上のエリート性にもかかわらず、非抑圧民族として不遇を強いられる同胞先住民や黒人への共感・連帯感と使命感が強く窺われることが特徴である。アメリカスの非西洋文化伝統は、こうした初期の西洋文化受容者たちによっても受け継がれてきたことがわかる。
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